周期性発熱について(PFAPA症候群を中心に)

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周期性発熱(周期性発熱症候群)は、周期的に発熱を繰り返す病気の総称です。

2022年7月に、静岡県で3歳の女児が新型コロナウイルス感染症で亡くなるというニュースがありました。
その際に、その女児が基礎疾患として周期性発熱の診断を受けていたことで、この疾患が大きく取りざたされることとなりました。

周期性発熱は多くの疾患の総称ですが、その中で最も多い疾患がPFAPA症候群です。
PFAPA症候群は、Periodic Fever(周期性発熱), Aphthous stomatitis(アフタ性口内炎), Pharyngitis(咽頭炎), and Adenitis(リンパ節炎) syndromeの略称です。
その名の通り、上記の4つを主症状とする疾患で、3-6日間の発熱を3-8週間おきに繰り返すという病気です。
発症頻度は5000人に1人程度と、小児では比較的よくみかける疾患です。

今回は、このPFAPA症候群を中心に、周期性発熱について解説していきます。

目次

周期性発熱とは

周期性発熱とは、周期的に発熱を繰り返す疾患です。
周期性発熱症候群には、①規則的に発熱を繰り返す狭義の周期性発熱と、②必ずしも規則的ではないが、間欠的に発熱を繰り返す遺伝性疾患である遺伝性周期性発熱があります。

これらの疾患を総称して、自己炎症症候群または自己炎症性疾患と呼ぶこともあります。

狭義の周期性発熱PFAPA症候群
遺伝性周期性発熱症候群家族性地中海熱
高IgD症候群
TRAPS
CAPS
メバロン酸キナーゼ欠損症
Blau症候群
周期性発熱症候群

2002年から2007年に、入院施設を有する国内小児科施設で自己炎症性疾患と診断された症例89例の内訳が以下になります。
最も一般的な疾患が、PFAPA症候群です。

参考文献:Pediatr Int 53:421-425,2011

PFAPA症候群とは

PFAPA症候群は、Periodic Fever(周期性発熱), Aphthous stomatitis(アフタ性口内炎), Pharyngitis(咽頭炎), and Adenitis(リンパ節炎) syndromeの略称です。
その名の通り、上記の4つを主症状とする疾患です。

周期性発熱の具体的な症状としては、3-6日間の発熱を3-8週間おきに繰り返します。

概要

PFAPA症候群の好発年齢は3-4歳ごろで、83%が5歳以下という報告もあります(1)。ただし、成人で発症することもあります。
発症頻度に男女差はありません。

国内での発症頻度について正確な文献は乏しいですが、5000人に1人程度という報告があります(3)

予後

基本的に予後は良好であり、重篤な合併症は少ないといわれています(2)
発作は4-8年程度で自然に消失することが多く、多くの患者さんは10歳前後で発作は起こらなくなります

症状

発熱については、3-6日間持続する39℃以上の発熱が3-8週間おきにみられます。
そのほかの症状については、以下の表のとおりです。

症状頻度
咽頭炎85%
頸部リンパ節腫脹62%
口内炎38%
頭痛42%
軽度の腹痛41%
嘔吐27%
PFAPA症候群の随伴症状
参考文献:自己炎症性疾患診療ガイドライン 2017

また、PFAPA症候群の重要な点として上気道症状(咳、鼻水など)を伴わないこと、非発熱期は完全に無症状であることがあげられます。

診断基準

PFAPA症候群にはいくつかの診断基準がありますが、もっとも有名なものがThomasの診断基準です。

Thomasの診断基準(J Pediatr 1999; 135: 15-21)
・一定間隔で反復する発熱が、5歳までに発症する
・上気道感染の症状がなく、以下の症状のうち少なくとも一つを伴う
 a) 口内炎 b) 頸部リンパ節腫脹 c) 咽頭炎
・周期性好中球減少症が除外できる
・発熱のエピソードの合間は完全に無症状
・正常な発育と精神運動発達

しかし、上記の診断基準では6歳以上で発症する例が含まれません。PFAPA症候群には学童や成人で発症する例もあることから、見直された診断基準が以下のものです。

Padehの診断基準(Rheum Dis Clin North Am 2007; 33: 585-623)
・毎月の発熱(年齢を問わず、周期的に繰り返す発熱)
・扁桃炎があり、咽頭培養は陰性
・頸部リンパ節腫脹
・時にアフタ性口内炎
・発熱のエピソードの間は完全に無症状
・ステロイドの単回投与で速やかに改善する

PFAPA症候群は、発症して間もなくは感染性の咽頭炎や扁桃炎と見分けがつかないことが多いです。
周期的に発熱を繰り返すことでPFAPA症候群を疑うことができます。

また、発熱を繰り返すその他の疾患が除外できていることも重要です。

繰り返す風邪とPFAPA症候群の違い

PFAPA症候群の好発年齢である3-4歳の児では、保育園などで風邪をうつしあうことで頻繁に発熱することは珍しくありません。
保育園に通う児は、年に6-8回風邪を引きます。

しかし、風邪を繰り返す場合はPFAPA症候群と以下のような違いが考えられます。

  1. 繰り返す風邪とPFAPA症候群の違い
    ・発熱の周期が一定でない
    ・鼻水、咳などの上気道症状がある
    ・発熱と発熱の間にも咳、鼻水などの症状が残る
    ・口内炎がみられない

PFAPA症候群の治療

発熱発作自体は自然に軽快するため、全身状態が良好な場合は無治療で経過観察することも可能です。
しかし、発熱を繰り返すことは本人およびご家族に社会的な負担を与えるため、相談のうえで治療を行うことも選択肢です。

・発熱発作の予防:シメチジン(タガメット®) 
・発熱発作の予防:ロイコトリエン受容体拮抗薬(モンテルカスト、プランルカスト)

・発熱発作時の治療:副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン)

・発熱発作の予防:扁桃摘出術

予防薬:シメチジン(タガメット®)

シメチジンは、ヒスタミンH2受容体拮抗薬という、胃酸分泌抑制効果を持つ胃薬の一種です。
本来の効能とは別に、免疫調整作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用などを持つと考えられています。

PFAPA症候群に対して、発作の消失が2-3割、発作期間の延長が2-3割に認められるという報告があります(2)

シメチジンは比較的安全な薬剤ではありますが、小児に対する安全性が確立されているわけではないこと、PFAPA症候群に対しては保険適応外であることに注意が必要です。

予防薬:ロイコトリエン受容体拮抗薬

ロイコトリエン受容体拮抗薬(モンテルカスト、プランルカスト)は抗アレルギー薬であり、気管支喘息やアレルギー性鼻炎に用いられます。

PFAPA症候群に対して、発熱発作の頻度の減少させるという報告があります。エビデンスは低いながら、小児への安全性が確立されているという点で治療の選択肢となる薬剤です。

発作時治療薬:プレドニゾロン

副腎皮質ステロイドであるプレドニゾロンは、炎症全般を抑制する薬剤で、多くの炎症性疾患、アレルギー疾患に用いられる薬剤です。
長期投与にあたっては様々な副作用が問題となりますが、PFAPA症候群に対しては1回程度の投与で著明な解熱効果があることから、長期的な副作用の懸念は少ないと想定されています。

プレドニゾロンは、PFAPA症候群の発熱に対して9割以上に解熱効果がみられ、1日以内に解熱するという報告があります(2)

プレドニゾロンはPFAPA症候群の発熱に対して一定のエビデンスがある薬剤ですが、PFAPA症候群以外の多くの疾患にも「効いてしまう」こと、またPFAPA症候群の発熱発作の間隔を短くしてしまう可能性が指摘されている点に注意が必要です。

予防的治療:扁桃摘出術

PFAPA症候群の根治的治療として、扁桃摘出術があります。
全身麻酔下に扁桃(扁桃腺)を切除する治療で、7-9割程度の発作消失率があります(2)

効果はもっとも期待できる治療法ですが、全身麻酔による手術であり一定の侵襲とリスクがあります。また、PFAPA症候群自体は自然によくなる病気であるため、治療を行うかどうかは症状による生活の障害の程度との相談になります。

その他の治療

コルヒチンという薬剤や、漢方薬なども有効とする報告はありますが、ガイドラインで推奨されるほどのエビデンスは集まっていない現状です。

基礎疾患としてのPFAPA症候群

PFAPA症候群は予後良好な疾患であり、重篤な合併症は少ないとされています。
また、成長障害や臓器障害などを伴うこともありません。

PFAPA症候群を持っていることがその他の疾患を重症化させるかどうかについては、明確なエビデンスはありません。

まとめ

PFAPA症候群は、周期的な発熱と、口内炎・咽頭炎・頸部リンパ節腫脹などの症状を一定期間で繰り返す疾患で、周期性発熱症候群のなかでは最もよくみられます。

繰り返す発熱の症状は10歳ごろまでに自然によくなることが多いです。しかし、発熱を繰り返すことは患者さんやご家族にとって大きな負担となるため、予防や発作の治療のためにいくつかの方法があげられています。

PFAPA症候群が、その他の疾患の重症度と関連するかについては現時点でははっきりとしたことはわかりません

PFAPA症候群のまとめ
・PFAPA症候群は、周期性発熱症候群のひとつであり、最もよくみられる疾患である
・3-6日間の発熱を、3-8週間おきに繰り返すことが特徴である
・繰り返す風邪とは、咳・鼻水がみられないこと、発熱と発熱の間は無症状なことなどで区別される
・発熱発作の予防や、発熱時の頓服としていくつかの治療薬・治療法があげられている
・PFAPA症候群がその他の疾患の重症度と関連するかは現時点でエビデンスが乏しい

参考文献

  1. 日本臨床 2018; 76(10): 1868-74.
  2. 自己炎症性疾患診療ガイドライン 2017 診断と治療社 p82-91.
  3. 日本臨床 2021; 79(7): 1014-17.
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この記事を書いた人

大学病院の小児科に所属する、現役小児科医です。
小児科医としての臨床経験を生かして、エビデンスに基づく情報発信をしています。
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