【現役小児科医が解説】麻疹(はしか)について

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麻疹(はしか)は、麻疹ウイルス(measles morbillivirus)による感染症です。
2025年上半期に、麻疹の感染報告が日本の各地でみられました。

麻疹は数ある病原体の中でも感染力がトップクラスに高く、同じ空間にいるだけでも感染する恐れがあります。

潜伏期間は10~12日ほどで、症状は二峰性の発熱(いったん下がってまた発熱する)と、二度目の発熱に伴う発疹です。
麻疹を疑う症状があった場合、そのまま病院を受診するとほかの人にうつしてしまう恐れがあるため、事前に病院や保健所への連絡が必要です。

麻疹の注意点として、急性期の症状だけでなく、数年後に亜急性硬化性全脳炎という合併症をきたすことがあります。
脳の中で麻疹ウイルスが増えることによる脳炎で、学力や集中力低下などからはじまり、けいれんなどの症状を経てやがて寝たきりや死亡といった転帰をたどります。

麻疹の予防のためにはワクチン接種が重要です。
麻疹の予防接種は、1歳と就学前の2回が定期接種となっています。

今回は、麻疹がどんな病気か、治療法はあるのか、予防のためにはどうすればいいか、を現役小児科医である筆者が解説します。

目次

麻疹とは

麻疹ウイルスによるウイルス感染症

麻疹(はしか)は、麻疹ウイルス(measles morbillivirus)によるウイルス感染症です。
病原体の中でも最も感染力の高いウイルスの一つです。

麻疹に対して免疫のない人が麻疹患者と接触した場合、ほぼ100%発症します。

2025年現在、日本は麻疹排除国

2025年現在、日本では麻疹の流行株はありません。
2015年3月に、日本はWHOの基準における麻疹排除国となりました。
国内で起きている麻疹は、海外からの持ち込みおよび、持ち込み発症者からの感染と考えられます。

麻疹の患者数

国立感染症研究所による、麻疹の発生動向のグラフは以下の通りです。
2019年の流行時は年間700人を超えましたが、おおむね年間500人以下で推移しています。

麻疹 発生動向
国立感染症研究所

麻疹の死亡率 ~かつて「命さだめ」と呼ばれた恐怖~

麻疹はかつては非常に死亡率の高い疾患で、1951年には年間1万人近くが亡くなりました(参考)。
2001年の流行の際は、約30万人がかかり、80人前後が亡くなったとされています。

かつて、麻疹は「命さだめ」と言われました。
これは、「麻疹にかかったら、生きるか死ぬかの病気である」ということです。

現代は、日本をはじめとする先進国における麻疹の死亡率は約1000人に1人です(1)
しかし、途上国では約20人に1人といわれています。
根本的な治療はないことから、いまだ恐ろしい病気であることにかわりはありません。

麻疹に対する誤解

麻疹について、巷ではいくつかの誤解をしている方がみられます。
それらの誤解について、ひとつひとつ検証します。

誤解① 麻疹は過去の病気である

前述の通り、麻疹の患者は毎年発生しています。
不規則的に大規模な流行もあり、直近では2019年に年間発生数700人以上という流行もおきています。

2025年も流行の兆しがあり、麻疹は決して過去の病気ではありません。

誤解② 麻疹はこどもの病気である

麻疹はこどもがかかる病気で、大人は安全であるという誤解があります。
しかし、麻疹にかかった人を年齢別にみていくと、こどもだけでなく大人もかかっていることがわかります。

2025年に発生した麻疹患者だけをみても、20代以上が約2/3を占めています

麻疹 発生動向調査

誤解③ 麻疹は軽症である

麻疹は軽い風邪のようなものであり、かかっても問題ないと考える人もいます。
しかし、先に述べた通り、麻疹は最悪の場合なくなる可能性もある病気です。

その割合も先進国で1000人に1人と、決して低い数値ではありません。
60代の方が季節性インフルエンザにかかった場合と同程度の死亡率です(参照)。

誤解④ 麻疹にかかった方が自然な免疫が得られる

いわゆる自然派の方には、予防接種よりも麻疹にかかった方が免疫が得られると考える方もいます。
しかし、麻疹にかかるとこれまでに得た抗体が失われてしまうことがあると報告されています(2)

麻疹にかかることで、麻疹以外に対する免疫が失われてしまうため、麻疹にかかることはメリットはありません。

2025年の麻疹流行について

2025年現在、麻疹の報告が日本各地で相次いでいます。
4月の時点で、すでに2024年の1年間の患者数を上回っています。

原因としては、ベトナムなどの海外からの持ち込みが発端ではないかと推測されています。
2025年4月時点で判明している58例のうち、推定感染地域は以下の通りです(参考)。

全体国内ベトナムタイフィリピンその他不明
5818253237

麻疹の感染経路

麻疹は空気感染する

麻疹は、空気感染するウイルスです。
空気感染、あるいは飛沫核感染とは、咳やくしゃみで出た飛沫から、水分がなくなって小さくなった粒子です。

飛沫感染では到達範囲は1-2m程度なのに対して、空気感染では同じ空間全体に到達します。

麻疹の感染力は病原体の中で最強レベル

麻疹の感染力は、数ある細菌やウイルスの中でも最も強いといって過言ではありません。
1人の患者さんが、何人の人にうつすかという数値を基本再生産数といいます。麻疹は12~18と極めて高く、季節性インフルエンザの数倍の感染力があります。

感染症基本再生産数
麻疹(はしか)12~18
百日咳12~17
おたふくかぜ4~7
風疹6~7
季節性インフルエンザ2-3
COVID-19(デルタ株)5-8
COVID-19(従来株)1-2

麻疹の症状

麻疹の症状と経過

麻疹の症状は、3つの期間に分かれます。

麻疹の症状
・カタル期…発熱、咳・鼻水、結膜炎(目の充血)など。この時期が感染力は最も強い。
  嘔吐、下痢などのお腹の症状も起こる。
・発疹期…熱が下がった後、再発熱とともに発疹が出てくる。
・回復期…解熱し、発疹は色素沈着を経て改善する。

麻疹の発疹はどんな見た目か

麻疹の発疹は、以下のような特徴があります。

麻疹の発疹の特徴
・赤い小さな発疹が、髪の生え際から始まって、顔や体、手足に広がる
・発疹と発疹がくっついて網目状にみえる
・指で押すと白くなる

麻疹の症状
日本皮膚科学会

また、有名な症状にコプリック斑があります。
これは、発疹の出る1-2日前にほっぺたの内側にできる、白い斑点です。

修飾麻疹とは

修飾麻疹とは、麻疹に対する部分的な免疫を持っている人が麻疹にかかった場合に発症する状態をいいます(1)
ワクチンを打っているが効果が減弱している場合、生後間もない赤ちゃんでお母さんからの抗体を持っている場合、免疫グロブリン製剤を投与されている場合、などがあります。

症状は軽く、発熱のみ、発疹のみといった場合もあり、発疹も典型的でないことがあります。
また、感染力も通常の麻疹よりも弱いとされています。

修飾麻疹の場合、症状のみでは麻疹と診断することは難しく、抗体検査による診断に頼ることになります。

麻疹の合併症

麻疹にかかった場合、約30%でなんらかの合併症が見られます(3)
麻疹の合併症として、肺炎、脳炎、中耳炎、亜急性硬化性全脳炎などがあげられます。

合併症肺炎中耳炎脳炎SSPE
頻度1~6%7~9%0.1%0.01%

麻疹にかかると免疫がリセットされる

麻疹にかかると、免疫が失われることは以前から知られていました。
ツベルクリン反応が陽性、すなわち結核に対して抗体があったお子さんが、麻疹にかかったあとに陰性になっていたという記録があります。

2019年のNature誌では、麻疹にかかることで抗体の11~73%が失われたと報告されています(4)
これまでに得た抗体、いいかえれば免疫記憶が失われることで、感染症にかかりやすくなります。

合併症のハイリスク

合併症のリスクが高いとされるのは、以下のような方です(2)

麻疹の合併症のリスクが高い人
・0歳児
・20歳以上の成人
・妊婦
・低栄養(特にビタミンA欠乏)
・免疫抑制状態(がん患者、免疫抑制療法中の患者、HIV患者)

合併症① 肺炎

患者さんの1~6%にみられます。
麻疹による死因の主な原因とされています。

合併症② 脳炎

発症率は0.1%で、肺炎と並んで麻疹の二大死因の一つです。
脳炎とは、脳にウイルスが感染することで炎症を起こす病態です。

けいれん、意識障害などの症状がみられます。
致死率は15%と高く、回復しても後遺症が残る例が多いとされています(5)

合併症③ 亜急性硬化性全脳炎(SSPE)

亜急性硬化性全脳炎(subacute sclerosing panencephalitis)は、遅発性の麻疹ウイルス感染症です。
麻疹にかかったあと、2年~10年(平均7年)の潜伏期間をおいて発症します(5)

学力や集中力の低下、性格の変化、動作の緩慢化(歩くのが下手になる、持っているものを落とす、字が下手になる)などの症状で発症します。
徐々に不随意運動(意図しない筋肉の動き)などの症状がみられます。やがて意識障害や筋硬直が出現します。治療法なども開発されてきていますが、いまだ予後不良な疾患です。

麻疹の診断・検査

感染症法に基づく麻疹の診断方法

麻疹の診断は症状から疑い、確定診断は検査によって行われます。
感染症法における、麻疹の届出基準は以下の通りです。

検査としては、①ウイルス分離、②PCR、③抗体検査、の3つがありますが、実際に行われるのはPCRと抗体検査です。

麻疹の届出基準
症状や所見から麻疹が疑われ、かつ届出に必要な要件を満たした場合

麻疹の届出のために必要な要件
ア 麻疹(検査診断例)
 臨床症状の3つを全て満たし、かつ病原体診断のいずれかを満たすもの
イ 麻疹(臨床診断例)
 臨床症状の3つを全て満たすもの
ウ 修飾麻疹(検査診断例)
 臨床症状の1つ以上を満たし、かつ病原体診断のいずれかを満たすもの

麻疹の臨床症状
 ①麻疹に特徴的な発疹、②発熱、③咳、鼻水、結膜充血(目の充血)など

麻疹の病原体診断
 ①ウイルスの分離・同定、②PCR検査、③血中抗体検査

麻疹の診断の流れ

麻疹の診断の流れは、以下の図の通りです。

国立感染症研究所感染症疫学センターによる、麻疹の検査診断のフローチャートは以下の通りです。

ウイルス分離検査

検体から直接ウイルスを取り出す検査です。
検査方法としてはもっとも確実な方法です。

発症早期であるほど検出感度が高まるため、発疹出現から7日以内に検体を提出する必要があります。

PCR検査

PCR検査は咽頭などから採取した検体の遺伝子を増幅し、ウイルスを同定する検査です。
検体は、血液、咽頭ぬぐい液、尿の3点セットを用います。

発疹出現後、4日以内の感染早期が検出感度が高いため、こちらも診断後すぐに検査を行うことが推奨されます。

抗体検査

抗体検査には、IgM抗体とIgG抗体があります。
このうち、抗体検査でおもに用いられるのはIgM抗体です。

発症(発疹出現)から3日以内だと抗体価が上昇していないことがあり、発症4~28日目に検査を行うことが望ましいとされています。

IgM抗体…感染に上がってくる抗体
      発疹出現から72時間以内に77%、11日以内に100%の人にIgM抗体が検出される
 
IgG抗体…感染後1週間前後から上がってくる抗体
 診断方法:発疹出現時と、発疹出現から2~4週以内の2回検査を行う
      IgG抗体の陽性化、もしくは抗体価の有意な上昇がみられた場合

麻疹かも?と思ったら

2025年現在、日本各地で麻疹患者の発生報告があり、いつ接触者となるかはわかりません。
そのため、麻疹患者と接触したり、麻疹を疑う症状がある場合の対応を知っておく必要があります。

麻疹の感染可能期間

麻疹の感染可能期間は、麻疹発症の1日前から解熱後3日間経過するまでです。
麻疹発症日とは、発熱・発疹・カタル症状のいずれかが初めて出現した日をいいます。

麻疹の接触者の定義とは

麻疹の接触者とは、以下の通りです。

麻疹の接触者
・麻疹患者と同居している
・麻疹患者と手で触れた、会話可能な距離(2m以内)で会話や接触をした
・麻疹患者の咳、くしゃみを浴びた
・麻疹患者と同一空間に同じ時間、あるいは患者が離れて2時間以内に同じ空間にいた

麻疹接触者となったら、麻疹にかかったか・予防接種を打ったかを確認

まずは、①麻疹にかかったことが検査で確認されたことがあるか②麻疹の予防接種を1歳以降に2回打っているか、を確認しましょう。
いずれかに該当していれば、発症予防策は不要です。

麻疹の感染歴がない(もしくは不明)、麻疹の予防接種を受けていない(もしくは不明)の場合は、緊急予防接種の対象となります。
緊急予防接種は、患者との接触後72時間以内に行うことが望ましいとされています。

予防接種の不適当者(妊婦など)は、接触から6日以内であれば免疫グロブリン製剤により発症が予防できる可能性があります。

麻疹の治療

麻疹に治療法はない

麻疹に根本的な治療法はありません。
細菌感染症(肺炎、中耳炎など)を合併していれば、抗菌薬(抗生物質)の投与が行われます。
麻疹はウイルス感染症であり、ウイルスには抗菌薬は効きません。

途上国では、低栄養が悪化因子となるためビタミンの投与などが行われますが、日本においては原則不要です。

麻疹の予防 ~MRワクチンについて~

MRワクチンの接種時期は、1歳と小学校入学前

麻疹の予防でもっとも重要なのが、MRワクチン(麻疹風疹混合ワクチン)の接種です。
現在は2回接種が基本で、①第1期:12か月から24か月②第2期:5歳以上7歳未満(小学校入学前の1年間)の時期に設定されています。

お母さんから胎盤を通じてもらう抗体の持続期間は約12か月のため、1歳になったらすぐにMRワクチンを打つことが推奨されます。

近年、MRワクチン接種率は低下している

第1期(1歳)
麻しん風しんワクチン接種状況
第2期(小学校入学前)
麻しん風しんワクチン接種状況

国立感染症研究所の調査によると、MRワクチンの接種率は2021年以降は低下傾向がみられています。
MRワクチンの供給不安、新型コロナウイルスの流行による受診控えなど、様々な要因があるとみられています。

麻疹の流行を抑えるには、95%以上の抗体保有率が必要

集団免疫閾値、すなわち麻疹の流行を抑えるための抗体保有率は95%とされています。
これは、基本再生産数から導くことができます。

2021年以降、MRワクチンの接種率が低下しており、接種率が95%を下回る地域が増えています。
これは、国内において麻疹の流行がおこりうる状況であることを意味しています。

ほかの感染症と比較しても、麻疹は感染力が高い分、多くの人が抗体を持っていないと流行が防げないことがわかります。

基本再生産数集団免疫閾値
麻疹12~1892~94%
風疹6~783~85%
おたふくかぜ4~775~86%
インフルエンザ1.4~430~75%

MRワクチンの効果は?

MRワクチンは、1回接種で約95%の人に抗体がつきます(小児内科 MRワクチン)。
しかし、10年ほど経過すると約20%の割合で、抗体価が下がってくると報告されています。
MRワクチンが2回接種なのは、1回目で抗体がつかなかった人のためと、抗体価を長持ちさせるためです。

MRワクチンの副反応は?

重篤な副反応(添付文書より)

MRワクチンの重篤な副反応
・ショック、またはアナフィラキシー(0.1%未満)
・血小板減少性紫斑病(100万人あたり1人程度)
・脳炎または脳症(100万人あたり1人以下)
・けいれん(0.1%未満)

MRワクチンの重篤な副反応として、ショック、アナフィラキシー、血小板減少性紫斑病、脳炎・脳症、けいれんがあります。
これらの頻度は、いずれも0.1%未満とされています。

主な副反応(添付文書より)

MRワクチンの頻度の高い副反応
・発熱(27.3%)
・発疹(12.2%)
・鼻水(8.3%)
・咳(7.8%)
・注射部位の発赤(7.3%)

MRワクチンの主な副反応は、主に発熱、発疹です。これらの症状は、接種後4~12日目によく見られます。

その他の副反応

過敏症
 発疹、じんましん、かゆみ、熱感など 接種直後から翌日にみられる
麻疹様症状
 接種から5~14日後(特に7~12日後)に、1~3日の発熱、発疹、だるさ、不機嫌、咳、鼻水などが見られる 
 10~20%では、軽度の麻疹のような発疹がみられることもある
局所症状
 注射した部位の発赤、腫脹、硬結などがみられることがある

MRワクチンは卵アレルギーでも原則接種できる

MRワクチンは、弱毒化した麻疹ウイルスをニワトリの細胞で増殖させたウイルス液と、弱毒化した風疹ウイルスをウズラの細胞で増殖させたウイルス液を混合してできています。

そのため、ごく微量の卵成分を含みます。
しかし、オボアルブミンという卵のアレルギー成分の含有量は、MRワクチン1バイアルあたり1ng以下であり卵アレルギーの方でも原則として接種は可能です。

MRワクチンと免疫グロブリン製剤について

免疫グロブリン製剤は、小児では川崎病などの疾患の治療に用いる薬剤です。
免疫グロブリン製剤は献血で集められた血液から抗体成分だけを取り出したもので、麻疹や風疹に対する抗体も含まれています。

免疫グロブリン製剤の投与後にMRワクチンを打つと、免疫グロブリンに含まれる抗体がワクチンを中和してしまい、十分な効果が得られない恐れがあります。

そのため、免疫グロブリン製剤の投与を受けた場合、MRワクチンの接種を3か月以上あける必要があります。
川崎病など、免疫グロブリン療法の大量療法を行った場合は、6か月以上(麻疹が流行っていなければ11か月以上)あける必要があります。

免疫グロブリン療法を受ける
患者さんと保護者の方へ

MRワクチンを打てない人

MRワクチンを打てないのは、下記に当てはまる方です。

MRワクチンを打てない人(接種不適当者)
・明らかに発熱している
・重篤な急性疾患にかかっている
・妊婦
・MRワクチンのアナフィラキシーを起こしたことがある
・免疫機能に異常のある疾患がある
・免疫抑制療法を受けている

麻疹のワクチンを2回接種していない可能性がある人は?

麻疹含有ワクチンを1回しか打っていない可能性がある
・1972年10月1日~2000年4月1日に生まれた方

麻疹含有ワクチンを1回も打っていない可能性がある
・1972年9月30日以前に生まれた方

出生年月日別 麻しん予防接種表

麻疹ワクチンは、1978年10月に生後12か月~72か月(1歳以上6歳未満)のお子さんを対象に定期接種(1回接種)となりました。
その後、2006年にMRワクチンが現行の1歳と小学校入学前の2回接種となりました。
2007年度の麻疹の流行をふまえて、2008年から2012年まで中学1年生と高校3年生を対象に2回目のワクチンを打つという特例措置が行われました。

そのため、1972年9月30日以前に生まれた方は麻疹ワクチンを接種していない可能性があります。
また、1972年10月1日から2000年4月1日に生まれた方は、1回しか接種していない可能性があります。

まとめ

ここまで、麻疹について解説しました。

麻疹は、近年小児科医でもあまり見かけない疾患になってきています。
そのため、保護者の方ではなおさら麻疹がどんな病気かぴんとこないことも多いでしょう。

麻疹がかつては多くの命を奪う病気でした。現代でも流行が抑えられているだけで怖い病気であることにかわりはありません。
流行を抑えるには、MRワクチンの接種が肝心です。1歳と小学校入学前の2回の接種を確実に行うようにしましょう。

また、麻疹が各地でみられると、麻疹患者と接触したかも?という事態も起こりえます。
その際に、適切な受診行動をとることができないと流行をさらに広げてしまう可能性があります。
本記事を読んで、麻疹が疑われる、もしくは麻疹患者と接触した際の対応について確認しましょう。

日本が引き続き麻疹排除国を維持するためには、一人ひとりが麻疹から身を守る意識が肝心です。

関連サイト

参考文献

  1. 多屋馨子. 小児感染症のいまを読み解く 麻疹, 小児科診療 2019; 82(6): 695-702.
  2. Peter M Strebel et al. Measles, N Eng J Med 2019; 381(4): 349-357.
  3. 斎藤昭彦. 皮膚症状が診断に重要な全身性疾患 麻疹・風疹, 小児科診療 2024; 87(増): 132-136.
  4. Michael J Mina et al. Measles virus infection diminishes preexisting antibodies that offer protection from other pathogens, Science 2019; 366(6465): 599-606.
  5. 關 文緒 他. 麻疹, 小児内科 2023; 55(増): 280-283.
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この記事を書いた人

大学病院の小児科に所属する、現役小児科医です。
小児科医としての臨床経験を生かして、エビデンスに基づく情報発信をしています。
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