溺水について

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溺水は小児の不慮の事故において上位の原因です。
毎年、水の事故の報道があり、小さなお子さんが犠牲になることもあります。

毎年100人前後のお子さんが溺水で亡くなっています。
年少の子どもは浴槽での溺水が多いですが、小学校以上になると屋外での溺水が増えてきます。

溺水がどのような状況で起こるのかを知ることは事故の予防につながります。
今回は、溺水が起こる背景や状況について解説し、溺水の予防方法についても言及します。

目次

溺水はどのくらい起きているか

小児の死因は、不慮の事故が多くを占めます。いずれの年齢でも、死因のトップ5に入ります。
そして、不慮の事故の中でも溺水はトップ3に入り、3歳以降では常に第2位です。

小児の死因 上位5位
引用:平成30年版消費者白書

溺水による救急要請の発生場所

溺水による救急要請の発生場所を年齢別にまとめたのが以下のグラフです。
2歳まではほとんどの溺水事故がが浴槽で起きていることがわかります。

3歳から6歳までは半数程度、小学校以上でも1/4程度の事故が浴槽で起きています。
一方で、小学校以上になると河川など、屋外での事故が増えてきます。

溺水による救急搬送の発生場所
引用:平成30年版消費者白書

溺水による死亡事故の発生場所

溺水による死亡事故の発生場所が以下のグラフです。

0歳、1歳では主な発生場所である浴槽での死亡事故が多いです。
一方で、2歳からは河川の死亡事故が増え、小学生以上では半数以上を占めます。

溺水による死亡の発生場所
引用:平成30年版消費者白書

溺水の発生状況
年間約100人の小児が溺水により亡くなっている
2歳まではほとんどの事故が浴槽で起こる
・1歳までの死亡事故は室内だが、2歳以降は屋外での死亡事故が増えてくる
小学生以上でも浴槽での事故は起きている

家庭内でおきた溺水事故の状況

家庭内で発生した溺水事故のおきた際の状況が以下のグラフです。
「目を離す」が各年齢で最も多い要因となっています。

家庭内で発生した事故の要因・背景
引用:消費者庁 御家庭内での子どもの溺水事故に御注意ください!

溺水事故の主たる原因である「目を離す」という点についての、さらに詳しい調査が以下になります。
「保護者の洗髪」と、「子どもを残して浴室を出る」が二大理由です。

すなわち、「目を離す」というのはせいぜい数分程度のことも多いと考えられます。

溺水事故時の状況
引用:消費者庁 御家庭内での子どもの溺水事故に御注意ください!

子どもは静かに溺れます

子どもは静かに溺れます。
映画やドラマと違い、大声を出して暴れながら溺れるわけではありません。

子どもは静かに溺れます
教えて!ドクター

日本小児科学会の調査では、以下のグラフのように多くのお子さんが大声や大きな音を出さずに溺れていたことがわかります。

溺水事故の起きた際の状況
引用:消費者庁 御家庭内での子どもの溺水事故に御注意ください!

首浮き輪による溺水事故

首浮き輪とは、生後1ヵ月から18ヵ月(体重11kg)まで使用できる、「ベビースイミング」の補助具です。日本では、2009年から発売されました。

この首浮き輪による溺水事故が、これまでに複数発生しています。
特に、入浴中に保護者の洗髪中などに子どもを待たせるために使用すると危険であるといえます。

事例1:
母が洗髪中に、児が首浮き輪を使用していた。2-3分目を離したところ、気づくと首浮き輪が目にかかるまでズレており、児は鼻の下までお湯に浸かっていた。すぐに抱き上げたところ、顔色不良で2回にわたり嘔吐をした。
この家庭では、首浮き輪を使用した方が安全だと考え、入浴時は日常的に首浮き輪を使用していた。また、事故当時は2つある安全ベルトのうち1つしか装着していなかった

事例2:
母と児の入浴中、児の顎が首浮き輪から外れて首浮き輪を口でくわえた状態になり、「フガフガ」と言っていた。児の顎を浮き輪の上に乗せなおして、母が自分の髪を洗おうとして1-2分ほど目を離した。浴槽を見ると、児がうつ伏せになって浴槽に浮いていた。浴槽には嘔吐物、便、首浮き輪が漂っていた。
その後のテストで、首浮き輪には空気漏れがあったことが発覚した。

Injury alert (傷害速報) 首浮き輪による溺水

上記の事故について、学ぶべきは以下の点です。

・首浮き輪はプレスイミングの道具であり、浴室で子どもを待たせるための道具ではありません
・使用中は決して子どもから目を離してはいけません
空気漏れがないことを毎回確認しましょう。
サイズがあっていることを確認しましょう。
・使用中は安全ベルトを確実に装着しましょう。

首浮き輪を浴室で使用することは、事故につながる恐れがあります。
わずか数分目を離すだけでも、大きな事故が起きています。十分注意しましょう。

屋外での水難事故を防ぐために

河川など屋外での溺水事故のパターンとして、「落としたものを拾おうとする」があります。
こういったケースを防ぐため、NPO法人 AQUAkids safety projectでは、『サンダルバイバイ おやこ条約』を提唱しています。

サンダルバイバイ
NPO法人AQUAkids safety project

また、国土交通省が作成した「リバーアドベンチャー ~川に魅せられし者たち~」という動画は、川で遊ぶ際の注意点についてRPG風に解説しています。
こちらも非常にわかりやすい動画のため、小学生以上のお子さんと川や海へ遊びに行く前には一緒に確認するといいでしょう。

公的機関からの注意喚起

家庭内

  1. 消費者庁:御家庭内での子どもの溺水事故に御注意ください!-入浴後はお風呂の水を抜く、ベビーゲートを設置するなどの対策を-(2021/07/07)
  2. 東京消防庁:STOP!子どもの「おぼれ」

川・海

  1. 消費者庁:もうすぐ夏本番!外出先での子どもの水の事故に御注意ください!-海水浴、水泳、釣り等で水辺へお出かけの際は、危険箇所等を事前に把握し、水辺で遊ぶときはライフジャケットを必ず着用しましょう-(2021/07/07)
  2. 消費者庁:海水浴での「フロート使用中の事故」に気を付けましょう!
  3. 政府広報:水の事故、山の事故を防いで 海、川、山を安全に楽しむために(2022/06/29)
  4. 政府インターネットテレビ:海のプロにきく“遊泳時4つの心得” (2020/07/10)
  5. 海上保安庁:Water Safety Guide

まとめ

溺水は、家庭内でも屋外でも起こる事故です。
どのような状況で事故が起こるかを知ることは、事故の予防につながります。

「こどもは静かに溺れる」ことを知り、入浴中や水遊び中は目を離さないことなどが重要です。
また、SNSなどで流行している遊具についても、きちんと安全性を確かめた上で使用しましょう。

事故の予防は知識と環境づくりからです。
この記事がみなさまのご家庭の安全に繋がれば幸いです。

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この記事を書いた人

大学病院の小児科に所属する、現役小児科医です。
小児科医としての臨床経験を生かして、エビデンスに基づく情報発信をしています。
ご意見、ご感想などありましたらお問い合わせフォームからご連絡ください。

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